リーダーのさらなる成長に向き合うには?ファシリテーター山本泉に学ぶ(前編)

 

リーダーが癒されることを通じて、社会の傷を癒す

―近年、起業家やリーダーが学び成長するための場は、増えてきています。しかし、「人の成長に向き合う」ことさえ難しいのに、リーダーの成長に向き合うとはどういうことなのでしょうか?今回は、アメリカ・シアトルを拠点に、グローバル・リーダーの成長にトレーナーとして向き合い続けてきた先駆者の一人、山本泉さんにお話を伺いました。

自らがリーダーとして闘っていた時間があったから、リーダーの葛藤と向き合える自分がいる

―現在はリーダーのトレーニングに取り組まれていますが、もともとはご自身もグローバルな環境でチャレンジする側の経験をされているとか。

トレーナーとして独立して約12年になりますが、それまでは国際公衆衛生保健機関に勤めていました。拠点はシアトルにある組織ですが、ある日、インド拠点の代表者を任されたんですね。

でも、赴任してきても、すべてが思うようにいかなくって。マネジメント経験も乏しかったし、インドの独特なカルチャーの中で働くことにも苦労しました。リーダーとして責任は大きいのにうまく進めることができず、ひとつの問題を解決しようとしているうちに別の問題がいくつも起きていて…、自分に自信を無くしていましたね。もう、毎日がジェットコースターみたいで息をつく暇もなくて。家庭とのバランスにも悩みました。

山本泉

リーダーシップトレーナ・コーチ。iLEAP共同創立メンバー、現ラーニングディレクター。Rockwood Leadership Institute専属トレーナー。​
90年代後半より、国際マイクロクレジット機関やエイズ衛生保健機関などでリーダーシップ育成のプログラム開発にたずさわる。2005年より、社会の外的変化やインパクトを目指すだけでなく、自己の意識や内側からの変化をうながすインナーワークを提唱。アジア・アフリカ・アメリカ、中米のソーシャルセクターにおいてーワークを行い、様々な違いを超えたグローバルコミュニティーとしてそれらを深めていくことで、世界の変容はより広がると実感。世界各地で日々奔走するソーシャルリーダーとともに学び続けている。シアトル在住。1児の母。

リーダーが癒されることを通じて、社会の傷を癒す

―リーダーからトレーナー側へとシフトされたわけですが、リーダーを育てていく意味をどう考えていますか。


例えば、これはアメリカの話ですが、昨年の選挙で大統領がトランプになったことのショックは、リーダーにとって、とても大きかったんです。これまで熱心に取り組んでいた人ほど、今回の結果に失望し傷ついている。

社会がバラバラに分断されていく過程の中で、私たちひとりひとり、つまり社会自体が、痛みを持ち、それが記憶されてしまうことがあるんです。これにちゃんと向き合わずに放っておくと、ネガティブな変化をもたらしたり、思ってもいない形で怒りが表出したりしてしまう。

自分たちが傷つけられたからといって、相手を攻撃して自分たちが望む世界に近づけるのか。危機に面しているからといって、相手を攻撃することで、求めている信頼を生むことができるのか。アメリカのソーシャルセクターは、それに向き合うことを、いま強いられています。

そもそも、痛みを体験したからこそリーダーになるということも多いんですね。社会の現状をつきつけられて、それに対する怒りや悲しみ、現状への疑問を持って、立ち上がっている。自分自身も痛みを感じながら現状に向き合い続けています。

ただ、リーダー自身が傷ついているという状態は、彼らの影響力を通じて社会にも反映されてしまいます。彼らの「傷」が結果として、スタッフやさらにはその先にいる彼らが助けようとしている人々に伝染してしまうことすらある。

そうではなくて、社会に刻まれた傷を癒すためにも、リーダー自身が自ら癒し癒やされるプロセスを体験することが大切です。

嵐のような環境に置かれていても、目を閉じて瞑想することはできる

―リーダーとして葛藤を抱える最中で学んだことや、トレーナーとして活かされていることってあるのですか?

リーダーには、自分の内面に意識を向ける時間、そして意識が自然と内面に向くようなプラクティス(技法・練習)を持つことが大切だと思っています。そういった時間やプラクティスを持つとこは、 信頼できるまわりのサポートを得て自分でつくる必要がありますね。

インド時代の話に戻りますが、当時は毎日がジェットコースターのような中で、家からオフィスに通うタクシーの間だけは、私だけの時間だったんです。

インドの雑踏はけたたましいけれど、タクシーの後部座席はすごく静かな、自分だけのための大切な時間だった。

そもそもインド行きを選んだのは、昔からインド瞑想修行をしたい裏事情もあったんですが、現実は寺院に足を運ぶことさえできない嵐の日々。じゃあ、揺れる車を寺院に見立てて、目を閉じ瞑想しようと。

そのタクシーは、信頼できる運転手がいつも運転してくれていて。彼がその空間をつくってくれていたことに、今でもすごく感謝しています。

あの空間がなければ、日々の嵐に飲まれて、私自身が嵐になってたはず。たとえ周りが大嵐でも、時に台風の目の静けさを得ることができた。すると、嵐を恐れてぎゅっと目を閉じていたのが、目を開けて周囲を見渡し始め、自分自身のありかたが変わってきました。すると自然にまわりも違って見え始める、同じ嵐のはずなんですが。

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​田村真菜​

​田村真菜​

作家・セラピスト。​1988年、東京・池袋生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部卒。ニュース編集者、NPO勤務や起業を経て、2017年「家出ファミリー」(晶文社)で作家デビュー。またセラピストとしても活動し、病気や障害、暴力、性被害など、さまざまな困難に向き合う人たちの話を聴いている​。​

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