逃げてきた先でまた否定することだけはしない

 

対談:JEN木山啓子×soar工藤瑞穂(中編)

対談も半ば、工藤への共感とともに表情が和らいでいくJEN木山啓子

多様性の尊重と、理念の浸透は、果たして両立するのでしょうか?
だんだん表情がやわらかくなってくる木山氏と、かえって真剣な眼差しを見せるようになってきた工藤氏。それぞれ経営側の立場から、スタッフとの関係性に話は及びます。

工藤

最近よく考えることなんですけど、人の成長って難しいですね。NPO法人を設立して1年経って、スタッフも増えてきているなかで、厳しさと優しさの加減がわからない

だから、NGOの立ち上げに関わって、たくさんの人をマネジメントしてきた話をすごく聞きたいんです。

木山

いい悩みですね。わたしはプロジェクトを設計するときに、小さなチャレンジを散りばめて、難民の人たちに参加してもらうのが大事だと思っているんですね。

平坦な道を歩いてるだけだと成功体験はできないんですけど、小さなチャレンジを乗り越える経験を積み重ねることで、成功する喜びを感じられるから。それを、プロジェクトデザインの中にたくさん散りばめておくんですよね。そうすれば、プロジェクトが終わったときに自立できるじゃないですか。それはスタッフに対しても同じだと思うんですよね。

だから、soarの活動理念には、これ以上共感できないぐらい共感しました。どんな状況の人も力を発揮できるから、それを応援する。しかも明るくっていう。

非営利組織の成長のジレンマ

非営利組織は成長するにつれて、多様な人材が集まるようになる。そこで、どこまで単一の理念の浸透を求め、どこまで多様性を許容するかは最大の挑戦のひとつだ

真剣な眼差し、言葉にも熱が入るSoar工藤瑞穂

多様性の中で、理念をつくっていくにはどうすればいいのか

工藤

でも、理念の共有って大変ですよね。たくさん人がいて、しかも世界中いろんなところに散らばっていて、どうやってやってるんですか?

木山

with difficultyですよね(笑)。だから、どうやって理念を浸透させているんですかって言われたら、受け入れられなくても諦めずに伝え続けるっていうことなのかな。

気持ちが強いスタッフが多いからこそ、いろんな方向に気持ちが強いんですよね。だからこそ多様っていえば多様なんですけど、それこそ、「いま水を求めてる人がいるんだから水を配らないでどうするの」っていう人もいれば、「未来につながるやり方かどうかっていうことが大事でしょ」っていう人もいるわけです。

たとえば、何かを題材にしてストーリーで伝えるようなワークショップをつくるとか、とにかく伝え続けていくしかないと思っています。ここで諦めたらもっと不幸な人たちが広がるから

工藤

どういうことでしょう?

逃げてきた先でまた否定することだけはしない

木山

うちのスタッフは、難民をはじめいろんな人たちと関わるから、その人たちに「こうあるべき」という価値観を押し付けるということは、逃げてきた先でまた否定することになってしまいます。

もちろんあからさまな否定はないですよ。だけど、「与えてあげます。あなたたちはかわいそうな人たちだから」みたいな態度で接するとしたら、それは否定と根底は一緒なことだと思うんですよね。だから、そうならないように伝え続けないと。

工藤

そういうのはありますよね。障害者は全部同じとか、LGBTの人は全部同じとかって。本当はすごい多様なんですよね。

対談の内に二人の間に深い共感が訪れる

それでも、多様性のある社会をめざす

工藤

「多様性のある社会ってどうやったらできるのか」みたいなテーマは、イベントとかでもゲストと話していてよく出てくるんですけど、どういうふうに考えていらっしゃいますか?

木山

多様性のある社会しか、地球もわたしたちも幸せに生き残る道はないと、わたしは思っているんですけど、全然そうじゃない方向を正しいと思ってる人たちがたくさんいて、その人たちとともに多様性のある社会をつくっていくしかないわけですよね。

すべてを包含するのが多様性だとすると、「彼が間違っていて、わたしが正しい」っていうのも間違いなんだなって思っています。

工藤

soarでも、「敵をつくらない」と考えていて、加害者だとしても敵と思わないで、なんでこうなったのかっていうのを考えてみよう、みたいなことをずっと言っているんですけど。一度考えてみるとか、一度知ってみるっていうのは大事なのかもしれないですね。

木山

知ってみると、根源的なところはそんなに変わらないことってありますよね。ただ、実行の部分ですごく違った考え方を持つ。そこは相容れなくてもいいのかもしれません。

先ほどの例ですが、人々の力を引き出す自立支援は本当に重要ですが、どんどん水を配ることが大事だって思っている人たちに対して、「それは間違っている」とは言えないですよね。だって、本当に水を必要としているんだから。わたしの考えに従うことが正しいのではなく、究極の目的に近づくにはどちらが早いか、ということだと思います。その 意味でも、状況は常に変化するし、必ず正しい答えを誰かが持っているということはありえません。

まさに工藤さんがおっしゃる「厳しさと優しさの加減が難しい」っていうところで、多様性に関してもそこがすごく悩みますね。みんなも自分も考え抜いて、一つひとつ答えを出してゆくことなのかな、と思っています。

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廣畑七絵

廣畑七絵

高知県出身。ノンフィクションライター。取材対象はご近所から海外まで。国際協力関係機関職員を経て、出産を機にライターに転身。大学時代に文化人類学を学び、フィールドワークを手法としたライティング、取材を得意とする。女子サッカーをたしなみ、学生寮の寮母もこなす。

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