地域のアセットを循環させるには?―実空間のデザインから情報空間の編集への転換

 

ツクルバ中村真広×コトラボ岡部友彦(4)

地域のアセットを循環させるには?―実空間のデザインから情報空間の編集への転換

最初にツクルバ中村さんにお会いしたのは、ちょうどこれからお話を聞くcowcamoという事業を立ち上げたくらいの頃でした。co-baの取り組みのように、比較的空間デザインに近い分野からおもいっきりジャンプしたなという印象がありました。実は、この取り組みを見て、二人が「同じ山を違う方向から登っている」ような感覚を覚えたんですよね。

不動産業界の矛盾と可能性

中村

もともと僕自身も建築設計出身だったりするので、不動産業界って衝撃だったんですよ。不動産デベロッパーは家を「商品」として売っていて、最初は全然共感できなかった。だけれど、入ってみて、こういう世界があるということも理解できた。

建築出身の自分としては、家というものは一点一点建築作品であり、その時代、土地、家族に合った生活をデザインするためにつくられているものでした。自分の中では、大量生産じゃなくてオーダーメイドがあたりまえだったわけです。

ただ、例えば分譲マンションも、初めの供給されるときは紋切り型な「商品」かもしれないですが、カスタマイズされてその家族にフィットするようになっていたっりとか、さらには、リノベーション事業者が手を加えたりしていくと、「一点もの」に育っていくんだなって思ったんですよ。そこに何か建築家によるものではないアノニマスな作家性を感じてしまって。

何故、良いリノベーション物件は流通しないのか

中村

実はcowcamoを始める前にツクルバでもマンションのリノベーションを何度かトライしているときがあったんです。

そのときのツクルバは“空間プロデュース会社”だったので「この物件絶対いい事例になるから買ってみない?」と不動産の知り合いに言われ、お金ないけど頑張って買って、リノベーションもして売るっていうことをやってみたんですよね。

その売り先として大手仲介会社のいろいろな人たちにお願いして売ってもらったんですけど、なかなか売れなかったんです。

いわゆる不動産の仲介担当はデザインに関してそんなに強くない。そして、利益の面から見ても、築浅のタワーマンションと築古のリノベーションマンションだったら、やはりタワーマンションを仲介する方が効率的です。

実空間のデザインから情報空間の編集への転換

中村

たしかにリノベーションだけであれば、僕らの先輩方も先駆的にやってこられていた分野なんです。だから、ツクルバはリノベーション物件の再販をやっていくのではなく、市場全体の底上げをしないといけない。だから、プラットホームを作ろう、っていう結論にいたって。それがcowcamoだったんですね。

cowcamo
cowcamo

都心には開発する余白はほとんどないので、臨海エリアなどの周辺部にマンションの新築が広がっている。一方で、都心に住むという選択肢は、クリエイティブクラスにとって必要だと思っていて。

だから、都心の住宅ストックをきちんとアップデートして再流通させることは、東京におけるこれからの住まいの選択肢になるだろうとも思っていました。そういった都市の課題として向き合っていこうって思ったのがcowcamoですね。

cowcamoって駄洒落なんですけど、「買うかも」しれない人に使ってほしいなって思っていて。

クリエイティブクラス

リチャード・フロリダによって提唱された概念。リチャード・フロリダは都市の経済成長はクリエイティブクラスによって主導されるとし、その後、都市政策においても重要なキーワードとして定着した。

消費者と物件のデータを循環させれば市場は更新されていく

中村

まずは中古リノベーションマンションに特化して流通プラットホームをつくろうとしていますね。消費者と売主の情報の2つを循環させることで、築古のマンションを再流通させる。そのための潤滑油になることをやりたくて。

初めは、cowcamoはメディアとして始まったんですよね。不動産の物件メディアをやって。初めはただのブログみたいなものだったんですけど。面白い、これはいい物件っていうものを常時100物件くらい載っているように、毎週毎週ピックアップして、自分たちで取材に行って、テキストも写真も撮りおろし書きおろしで、一個一個丁寧にプレゼンテーションして載せていくっていうのをやりはじめたんですよ。

そしたらそのメディアにファンがついて問い合わせが多くなってきて。ようやくアプリも出しました。

ユーザーの情報をデータベースとして貯めることによって、ユーザーにこんな物件がありますよっていうリコメンドができる機能ができつつあります。

そのデータベースがあれば、物件の売主である不動産事業者に、世の中こんなものを求めているのでこういう物件作ったほうがいいですよ、っていうのを企画提案をして一緒に商品づくりをすることができ、さらにはそれをcowcamoで売っていくことで住まいが循環していく。

循環が進めば進むほど、僕らがマーケットデータを持つようになって、新しい、本当に求められている循環が提言できるようになるっていう感じ。そのモデルを試行しているところですね。

扱い方を変えるだけで価値は蘇る―コミュニティ・アセットという考え方

岡部

愛媛県の松山市では築90年の洋館を手がけています。30年前に病院部分が閉鎖。10年程前から空き家状態。非常に広い。400平米くらいある。もとは表側が病院で裏が住宅になっていて広い庭園もある。しかし管理がされず僕が出会った時は既にお化け屋敷のような感じでした。地元では、なかなか触りにくい物件だったんですが、地域の人や学生達にも協力してもらい、リノベーションを行って部屋単位で店舗として貸し出す形で運営しています。

かつての洋館
リノベーション前の洋館
洋館After
リノベーション後の洋館のただ住まい

中村

素敵そうですね、それは。建物自体は保存ですか?

岡部

保存+活用です。地元の大工さんなんかに協力してもらったりしながら、リノベーションして、部屋単位でお店としてやったりとか事務所として使ったりしながら、小分けにして貸し出していくという仕組みです。

コミュニティ自身が、地域の有休施設を自分たちの拠点として利用したり、活動のための資金捻出に利用したりするのをイギリスでは「コミュニティ・アセット」って言うんですね。イギリスの場合は行政が持っていた公共施設で、統廃合とかで使わなくなった建物を地元の団体に、ほぼタダ同然で貸出をして、地元の団体が持続的な活動をしていくため資源の一つとして提供する考え方があります。

日本だと行政の建物だけじゃなく民間の空き家の方が非常に沢山有る中で、特に地方って、所有者が東京など遠方にいて何もケアできないという状況は結構少なくないじゃないですか。それを地域の財産として活用していくほうがいいんじゃないと考えているんです。

岡部

今回は先行事例としてうちの会社で全部お金を出して、リノベーションを行った上で貸し出すことにしました。ゆくゆくは地元でお金を集め、古民家活用に投資をし、活用して上がってきたお金を地元でプールして、まちづくりの事業に使うという循環も考えているわけです。

これから人口が減少していく中で、行政予算がまちづくりにまで回ってこない可能性はなくはないわけです。だとすると早くから地域の中でお金を生むスキームを、地元のリソースでつくっていくことを仕掛けておきたいなと思っていて。

中村

いや、街と向き合うのは本当に大変ですよね。

関連記事
ツクルバ中村真広×コトラボ岡部友彦対談
(1) 場を軸に社会課題を解決する「活動家」でありたかった
(2) 「自己組織化」を促すビジネスデザイン
(3) 地域のアセットが地域の課題を解決する
(4) 地域のアセットを循環させるには?―実空間のデザインから情報空間の編集への転換
(5) 入場券としての資本


本メディアは、購読会員による支援と篤志家によって設置された基金の運用益によって運営されています。
投じられた資金はWILLの運営と社会起業家の支援に投じられます。

Tetsuo Kato

アジア及び日本におけるベンチャー企業および非営利組織の事業開発に携わり、計27社の事業開発及び変革を支援。2011年、東日本大震災を契機にWorld In Asiaを立ち上げ、以降、東北、日本、アジアでの「社会的投資」を手がけてきた。AERA「アジアで勝つ日本人100人」に選定。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社 2011年)

関連記事

  1. 経済価値と文化的価値のギャップを埋められたら。アート市場の革新を目指す起業家 原麻由美(前編)

  2. 地域のアセットが地域の課題を解決する

  3. 経済価値と文化的価値のギャップを埋められたら。アート市場の革新を目指す起業家 原麻由美 (後編)

  4. 場を軸に社会課題を解決する「活動家」でありたかった

  5. 「自己組織化」を促すビジネスデザイン

  6. 入場券としての資本

Hot Articles

Special Thanks

Suguru Ikuta, Tsukasa Sawaguchi, Saori Hasimoto, Nanae Hirohata, Jiro Atsuta, Junichiro Yuki, Keiko Kiyama

PAGE TOP